担当者コラム一覧

16年11月29日 第三十五回 51年目の「横浜市こどもの美術展」
16年10月3日 第三十四回 横浜美術館子どものアトリエ「教師のためのワークショップ」開催!
16年7月22日 第三十三回 五感をつかって撮ってみよう! 「さわって、かいで、撮って、焼く-体感写真-」ただいま挑戦中!
16年4月15日 第三十二回 今年で20回目の開催「こども狂言ワークショップ~卒業編~」
16年3月25日 第三十一回 大きな歓声を追い風に連凧揚げ! 「おハながらdeっカイト」
16年1月27日 第三十回 子どもの手を育む活動「やってみよう!ホチキスでとめて、とめて」
16年1月4日 第二十九回 「第3回 ミニ・ビブリオバトル 大好きな本てどんな本?」 大佛次郎記念館
15年11月27日 第二十八回 「横濱 JAZZ PROMENADE 2015 」〈ジャズ〉で育まれる子供たち
15年10月2日 第二十七回 たくさん笑って暑さも吹き飛ぶ!「夏のこども寄席」(横浜にぎわい座)
15年9月8日 第二十六回 家族みんなで楽しむ、わくわく音楽体験週間! ~「みなとみらい わくわく遊音地」より~
15年8月10日 第二十五回 子どものための夏休み日本舞踊ワークショップ 『めざせ☆やまとなでしこ&にっぽんだんじ!!』
15年7月13日 第二十四回 ―サエグサくんのこと―
15年3月9日 第二十三回 本物の強さ
15年2月8日 第二十二回 「ハマキッズ・アートクラブ」の再開(横浜市民ギャラリー)
15年1月9日 第二十一回 吉野町市民プラザ 子ども達が楽しめる多彩なプログラムを開催しています!
14年12月8日 第二十回 ダンス って 面白 い!! 「学校 プログラム」
14年11月10日 第十九回 岩間市民プラザpresents 『橘樹神社 神楽でござる!2014』
14年10月20日 第十八回 「大好きな本」をもって、大佛次郎記念館に集まれ!!  「ミニ・ビブリオバトル」~第2回は、11/8(土)開催予定です!~
14年9月22日 第十七回 横浜にぎわい座「夏のこども寄席」
14年8月20日 第十六回 家族みんなで楽しむ、わくわく音楽体験週間!~「みなとみらい わくわく遊音地」より~
14年7月25日 第十五回 自分のペースで少しずつ「親子で造形ピクニック」
14年6月30日 第十四回 嬉しいお手紙 ~親子のフリーゾーンに参加したご家族から~
14年4月28日 第十三回 春は節目の季節です~『こども狂言ワークショップ』(横浜能楽堂)から~
14年1月28日 第十二回 コンサート、演劇、造形・・・ いろんなジャンルで芸術にアプローチ!
14年1月7日 第十一回 「子ども一日館長」大佛次郎記念館
13年12月18日 第十回 昔、子どもだった皆さんへ
13年11月26日 第九回 種をまく
13年11月5日 第八回 子どもって ∞(無限) です
13年10月23日 第七回 笑いで暑さも吹きとばす「横浜にぎわい座有名会『夏のこども寄席』」
13年10月1日 第六回 日常のひとひらのように―美術館の鑑賞プログラム(横浜美術館)
13年9月3日 第五回「和の文化にふれる!『子どものための夏休み日本舞踊ワークショップ めざせ☆やまとなでしこ&にっぽんだんじ!!』(横浜市岩間市民プラザ)から」
13年8月6日 第四回 楽しいっていろいろ、子どものためのプログラムより
13年7月16日 第三回 「楽しい音楽がいっぱい♪『こどもの日コンサート』から」
13年6月25日 第二回 「祝!初舞台 ~『横浜こども狂言会』 (横浜能楽堂)から~」
13年6月4日 第一回 「親子のフリーゾーンのちいさな人たち」
子どものいる風景~活動現場から

第六回 日常のひとひらのように―美術館の鑑賞プログラム(横浜美術館)

空気がどんどん、秋の黄金色になっていきますね。

『子どものいる風景~活動現場から』の6回目は、

横浜美術館のレポートです。

 

みなとみらいに位置する横浜美術館は、

「さまざまな人に開かれた美術館」を目ざして、

鑑賞プログラムをさらに充実させようとがんばっています。

「さまざまな人」のなかで、子どもたちはもちろん、大切な構成員。

 

▲ 作品を見つめる目は、嬉しいくらいキラキラしています。

 

子どもたちとのプログラムでは、予想もしなかった感想が噴出します。

毎日毎日、展示室で作品を見ている我ら美術館スタッフでさえ、

見えていなかった、気づいていなかったことを教えられるほど、

子どもたちの視線は、純粋で、鋭くて、強い。

その新鮮な反応には、とにかく魅了されずにいられないのですが、

同時に私は、「目立つ反応」ばかりに注目しないように、

という自戒も抱いています。

 

8月に開催した「夏休み子どもフェスタ2013」で、こんなことがありました。

「子どもフェスタ」は、作品をさがすゲームからスタートして、

作品や作者にまつわる話をしたり、絵や彫刻の材料を見せたりしながら、

子どもたちを主体的でゆたかな鑑賞へと導くプログラムです。

今年は手で触れていいブロンズ彫刻も登場。

 

▲ 子ども・大人を問わず大人気だった「さわれる彫刻」。

いつもは「子どものアトリエ」の入口に展示しています。

 

ある日、小さな男の子がお父さんとやってきました。

いろいろ話しかけても、これといった反応は示さない。

「まだ2歳だから、あんまり話せないんです」と、申し訳なさそうにお父さん。

さわれる彫刻を前にしても、その子は人物像の腕をじっと握っているだけ。

ところが、その握りかたが特別でした。

動かないのです。

なでたり、さすったりするでもない。叩いてみるわけでもない。

同じところを、ただじっと握りしめ、じっと見つめているのです。

やがて、ちょっと別行動をしていたお母さんが到着。

「さ、電車、乗りに行こっか?」

微動だにせず、男の子が答えます。「でんしゃ、のらない。」

なんと明快にして強固な反応! これは驚きでした。

 

冷たく硬く、ごつごつしたブロンズの手触り。

でも、彼の手のなかで、金属は徐々に熱を帯びていったはず。

そのゆるやかな変化を受ける掌から全身にかけて、

いったいどれほどの感覚が動いていたのか、

それは見ることはもちろん、想像することさえできません。

でも、彼の小さな身体の中では、確実になにかがうごめいていたのです。

そして、彼が自分の外に広がる世界を確認しているあいだ、

かたわらで静かに見守っていたお父さんと、

我が子が納得するまで「電車」を待ち続けたお母さんのすがたは、

プログラムに課している「自戒」へと、私を立ち戻らせてくれました。

 

大人は、自分たちが嬉しくなるような反応を、ついつい子どもに求めてしまう。

そういう欲求には、どこか性急で、慌ただしさがつきまといます。

でも、子どもたちの時間は、もっとゆったりと流れている。

その一方で、彼らの内には次々と、「はじめてのこと」「新しいもの」が侵入し、

驚きや発見や疑問が、ごうごうと音を立てて渦巻いているのでしょう。

 

美術館の前の噴水の周辺は、近所の子どもたちのお散歩コースです。

夏の陽にあぶられたアスファルトの道路に、掌を当てている子。

噴水の縁にしゃがんで、水の奥をのぞきこんでいる子。

階段を一段一段、よいしょ、よいしょと昇ったり降りたりしている子。

 

▲ 大好きなお父さんとお散歩? 両手を伸ばして水しぶきを確認中。

 

これら日常の、何ということもない行為は、

記憶に明確に刻まれることなく、やがては忘れられていくにちがいない。

でも、外界に触れ、その感触をひとつひとつ確認していく作業の積み重ねこそ、

私たちの感性や想像力の、最大の基盤をなしているのです。

 

派手派手しく記憶に残らなくてもいい、

忘却の彼方に消えていくように見えながらも、

子どもたちの想像力に溶けこんで、それを豊かにしていく、

眼には見えない栄養素みたいなワークショップを実現できたら、

と願わずにいられません。

日常のひとひらのような、ささやかだけれども大切な、

そんななにかを提示できたとき、美術館という場は、

本当の意味で「開かれた」ものになるのではないか――。

 

・・・なーんて、自分でもちょっと照れくさくなってしまう理想を胸に、

彫刻を握りしめていた男の子を思い返しつつ、

美術館の前を行き交う多くの人たちの姿を眺めつつ、

進化波に乗り切れなかったカモノハシのようにのんびりと、

また次のプログラムを練りながら、みなさまのご来館をお待ちしています。

 

 

横浜美術館

教育普及グループのカモノハシ

 

 

 

 

今度の「おやこで楽しむコレクション展!」は、12月21日です。

(10月13日の回は締切りました)

詳しくはこちらをご覧ください。

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